代表取締役変更で契約書は無効になる?作り直し不要・通知で済むケースを実務で解説
代表取締役が変更になったとき、契約書は作り直すべき?

代表取締役や取締役が交代したとき、「これまでに締結していた契約書は、全て作り直さないといけないの?」と不安に思う担当者も多いでしょう。
結論から言うと、代表取締役の変更は契約書の効力に影響を及ぼすことはありません。
代表者変更は契約書の効力に影響を与えない理由

法的には、会社という法人が契約の当事者であり、代表者はその意思表示を代行する立場なので、代表取締役がかわったとしても契約書の効力は継続します。
だからと言って、何もしなくて良いということではありませんのでご注意ください。
契約書によっては、代表取締役の変更が発生した場合には、速やかに通知するよう定めてある場合があります。
この場合は通知義務がありますので、遅滞なく通知をするようにしてください。
通知義務を怠ってしまうと契約違反と看做されることもあるので注意しましょう。
- 契約書の「変更通知」や「承諾」条項を確認する
- 通知内容は「代表者変更のお知らせ」で十分
- 代表者変更の登記完了後に「登記事項証明書」や「印鑑証明書」のコピーを送付すれば丁寧
社名変更も契約書の効力に影響を与えません
似たケースでは、社名変更も同様です。
社名の変更も契約書の効力に影響を及ぼすことはありませんが、旧社名で契約書が残ると混乱を招く可能性を考えると、相手方に速やかに通知しておくのが無難です。
また、社名変更は登記上の商号が変わるため、登記事項証明書の提示を求められる場合もあるので、予め準備しておきましょう。
契約書の効力は法人に帰属している

法的には、法人格としての会社の意思表示を、権限のある代表が署名捺印をもって行っており、その効力は法人に帰属します。
そのため、たとえ代表者が変更になったとしても契約書の効力には影響を及ぼさないということになります。
代表者名や社名が古いままだと気持ち悪いかもしれませんが、内容に問題がないのであれば、契約書を全て作成し直す必要はありません。
こういった変更があった際に、内容が陳腐化していないか、現状との乖離がないかなど、契約内容を確認するようにし、必要であれば契約内容を見直すようにすれば良いと思います。
逆に契約書を作成しなおすことなると、交渉によってはこれまでより取引条件が悪くなったりする可能性もありますので、慎重に進めるようにしましょう。
わざわざ「寝ている子を起こすな」というのが実務的な考え方です。
実務対応のまとめ
代表取締役や社名が変わった場合は、以下の流れを押さえておきましょう
- 変更登記が完了している
- 契約書の「変更通知条項」を確認
- 取引先に代表変更通知を送付(登記事項証明書を添付)
- 主要取引先や金融機関には個別連絡
- 社内帳票やテンプレートを更新
代表変更通知の例文
件名:代表取締役変更のお知らせ
平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
このたび当社は、令和◯年◯月◯日付で代表取締役が変更となりましたのでご案内申し上げます。
(新代表氏名など)
なお、本件により既存の契約関係および取引条件に変更はございません。
引き続きご愛顧のほどお願い申し上げます。
まとめ
代表者や社名の変更は、契約書の効力に直接影響を与えるものではありません。
ただし、契約書に定めれた通知義務の有無を確認し、誠実に情報を伝えることが会社の信用に繋がります。
再契約を優先するのではなく、内容確認と周知徹底が実務の基本方針といえるでしょう。

【執筆者紹介】
M部長|中小企業の管理部門役員。
都市銀行での法人営業を経て、メーカー・小売・サービス業など複数業界で総務・経理・経営企画を経験。
現職ではバックオフィス全般のマネジメントに従事。
「中小企業の管理部門のリアル」をテーマに、日々の実務で役立つ情報や考え方を発信しています。







