従業員に決算書を開示してほしいと言われたらどうするか?
自分の会社の経営状況を知るには
自分の勤める会社の経営状況が気にならない人はいないでしょう。
上場企業であれば決算内容を知る方法はいくつでもありますが中小企業であればそう簡単にはいきません。決算書はオーナー経営者と経理担当者だけが閲覧可能で基本的には開示されていないことが多いでしょう。中小企業では、経営者の考え方によって開示されている会社と開示されていない会社に分かれると思います。
決算書の開示について、経営者と従業員の両方の目線を考えながらまとめてみました。
そもそも決算書は開示しなければならないのか?
そもそも中小企業の決算書に開示義務はあるのでしょうか。
株式会社の場合、「会社法」においてその規模に関係なく「決算公告」を行うことが義務となっています。
しかし、そのことを知らない経営者も多く、実際にはほとんどの会社が決算公告を行っていないので、この義務は形骸化しています。
中小企業が決算広告しない理由としては、費用がかかるだけでメリットがほとんどないといったところでしょうか。「株主」や「債権者」からの開示請求があった場合は開示しなければなりませんが、「従業員」が決算書の開示を求めたとしても経営者の判断で断ることができます。
経営者からすれば、決算書には会社の内情を知るうえでのセンシティブな情報も載っていますので、開示には当然慎重になります。
経理担当者も業務上で知り得た内容を許可なく開示すると懲戒処分の対象となる可能性がありますので気をつけましょう。
決算書開示のメリット・デメリット
私個人は決算書の数字を広く従業員と共有して経営課題を共有しながら仕事をしたいと考えています。
経営者から根拠や裏付けとともに方針説明を受けたほうが、会社からTOPダウンの目標をただこなすだけよりも能動的に動けると考えるからです。
しかし、経営者は決算書の内容理解もそこそこに、黒字だったら給料を上げろ、赤字であれば会社が危ないと言い、役員報酬も知られたくないから開示したくないと思っていたりします。
それなのに、このように思っている経営者ほど従業員に対して「経営者目線」を求めたりします。
従業員の中に本当に日々会社全体のことを考えながら「経営者目線」で仕事をしている人がどの程度いるでしょうか?
おそらくほとんどいらっしゃらないでしょう。
オーナー経営者と従業員の間には経営に対して埋めがたい感覚の違いが存在しているのではないでしょうか。
私自身、オーナー企業で長く経営層に近い立場で仕事をしてきた一従業員だからこそよくわかっているつもりです。
決算書の開示よりも先にやること
それではどうすればこの現実と理想のギャップを埋めていけるのでしょうか。
結論としては、経営者と社員が共有すべき数字を本当に大事なものに絞ることです。
よくKPI(Key Performance Indicator)と言われたりしているものがそうです。
自社のKPIを共有することで、会社、部門、従業員の目標を明らかにすることが大切だと思います。
決算書を開示して、その分析結果を従業員に説明しても、正直ピンとこない人のほうが多いと思います。
だからといって数字を一切公表しないのは、従業員を疑心暗鬼にしてしまいます。
かつて、外部コンサルタントからの指示で現場の負荷が上がった後、結果として「会社はあれで儲かったのだから、これくらいのこと聞いてくれてもいいだろ」と言ってきた従業員がいました。
正直、そんな感覚の従業員がいることに驚きましたが、数字をクローズにしていることとこの発言に多少の因果関係はあるだろうなと感じました。
本当に経営者と従業員で共有しなければならないことは
経営者にとっても従業員にとっても、一番大切なのは会社を発展継続させていくことだと思います。
そのためには、経営の成績である決算書を見て分析することも大事ですが、赤字にならないように自分自身の計数感覚(売上-費用=利益)を磨くことだと思います。
このことは、「つぶれない会社のリアルな経営経理戦略」(ブックレビューはこちら)でも述べられています。。
自分自身の計数感覚にずれがないかどうかを、KPIや経営指標などで確認することで、常に軌道修正しながら次の手を考えることは、経営者にとっても従業員にとっても重要なスキルだと思います。
係数感覚が経営者と従業員の間で一致していれば、決算書を開示すべきかどうかなどで悩むことはないのかもしれません。