電車が遅延して遅刻した従業員の給与カットはできるの?
遅延証明書があれば遅刻しても大丈夫?
皆さんの会社では、電車の遅延や運休によって遅刻や欠勤してしまった従業員の給与の扱いはどうされていますか。
寝坊で遅刻すれば自己の不注意ですから遅刻控除としているでしょう。
公共交通機関が遅延して遅刻した場合、多くの会社は遅延証明書をもらって会社に提出することで遅刻控除の対象外としていると思います。
しかし、ノーワーク・ノーペイの原則からすれば、どちらのケースでも遅刻控除として全く問題はありません。
ただ、自己の責任によらない公共交通機関の遅れという不可抗力の理由をもって給与を減らすのは厳しいだろうという心情で遅刻控除はしていないという会社が多いのではないでしょうか。
このようなケースについてきちんと規定で明文化しておくことをお勧めいたします。
というのは、次のようなケースが発生する可能性があるからです。
従業員の公平感をどうやって保つか
ひとつめは、台風などの際に実施される計画運休によって社員のほとんどが出勤できなくなった場合、これも不可抗力ですが同じように給与が補償されるのかという問題です。
一部の社員が計画運休の為に出勤できず、ノーワーク・ノーペイの原則に従って無給としたのですが、通常時の遅延であれば救済されていたので、同じような不可抗力の理由で有給か無給かの判断が分かれる結果となり、従業員からはダブルスタンダードと受け取られてしまいました。
ふたつめは、車通勤の従業員が台風による通行止めのため迂回せざるを得なくて遅刻してしまった際に、公共交通機関のように遅延証明書がないので救済なく遅刻控除としたため、通勤形態によって差がでるダブルスタンダードとなり不満が出ました。
原則どおりノーワーク・ノーペイに則って処理していればこのような不満を招くことは恐らくなかったと思います。
また、ノーワーク・ノーペイに従わず有給としていたら、台風という非常時においてもきちんと出勤してきた従業員と結果として差が出ないので正直者がバカを見るという結果になってしまうため、その選択もできませんでした。
事前に何が救済されて、何が救済されないのか明確にしておくことで、このような従業員からの不信を避けることができますので、まだ明確になっていないということであれば、急ぎ対応しておくことをお勧めします。
<ノーワーク・ノーペイの原則>
「労働者の労務提供がなければ会社は賃金を支払わなくてよい」という労働基準法24条を根拠とする基本原則。
これは、産前産後休暇や育児休業・介護休業といった法律で定められた休みや慶弔休暇などの会社が規定している休みの場合も同様であり、原則は無給となります。
しかし、慶弔休暇などは、親や配偶者、子どもの死亡時は有給、それ以外は無給とするなど、有給とするか無給とするかはそれぞれの会社が決めています。
もし、これらの休日の多くが有給として処理されていれば非常に手厚い会社だと言えるでしょう。
ノーワーク・ノーペイの原則には例外があります。
ひとつは年次有給休暇、もうひとつは休業手当(労働基準法26条)です。
年次有給休暇は、ノーワークだったとしても給与が保障されています。
休業手当は、会社都合で従業員を休ませた場合、平均賃金の6割以上を支払うよう定められています。