「会社がどこを目指しているか分からない」と言われたことはありませんか?
経営理念を大切にしていますか?
皆さんの会社は経営理念を大切にしていますか?社員に広く浸透していますか?
経営者が経営理念をかかげて社員に一生懸命説いているのに、社員から「会社がどこを目指しているのか分からない」といった声が聞こえてきたことはないでしょうか?
これは、社員が経営理念や会社方針、その時々の施策や通達を理解していないということではありません。
もう少し範囲を狭くして、管理部門の経営理念ならぬ運営理念はありますか?
私も管理職になった当初から自分なりに考えた理念を掲げ、文書にして部下に配布して、こんな部署にしていきたいと説いてきました。しかし、「部長が何を考えているかわからない」「この部署をどうしていきたいかわからない」なんてことを散々言われました。
自分としてはきちんと目指すべきところを明示しているつもりだったので、何がわからない?のかわからない?状態でした。
なぜそのような状態になっていたのかを振り返って考えてみました。
そこで出た結論は、従業員は経営理念を(部下は運営理念を)求めていなかったのだということです。
誤解のないように申し上げておきますが、経営理念はいらないということではありません。経営理念は、会社や社員が迷ったり困ったりしたときに拠り所となるべき概念であり、会社にとって唯一無二の大切なものです。それは間違いありません。経営方針や社是なども同じだと考えています。
転職する時、私は面接で必ず社長に経営理念とそれに対する思い入れを質問して聞くようにしていました。その内容に共感できなければその会社で働きたいとそもそも思わないですよね。ほとんどの社員がそうです。入社後に経営理念を知ったからといって、それに異議を唱えるようであれば、とっくに辞めて自分の考えに沿った理念を掲げる会社に行っているはずです。
なぜ社員は経営方針が分からなくなるのか?
私の部下の話に戻しますが、同じように私の掲げた理念に反対や異議を唱えた人はほとんどいませんでした。
社員の一部には経営方針など歯牙にもかけない方もいますが、そのような方は次第に同僚とも上手く行かなくなり、最終的には会社を去っていきます。
では、会社または上司に対して「方針がよくわからない」といった不満を漏らす原因は何かというと、会社または上司の側が、社員ひとりひとりの果たすべき自分の役割と求められる成果について明示していないからだと私は考えています。
理念といった上位概念が徐々に実務レベルに降りてきたときには、自分の果たすべき役割としてはぼやけてしまうのです。
優秀な社員であれば自分なりに解釈して仕事を進めることができますが、これが落とし穴です。優秀な社員はそれなりに仕事を進めてくれるので、会社や上司は会社方針について理解してくれていると勝手に思ってしまうのですが、実のところほとんどの社員はきちんと説明して欲しいと思っています。
何かしらの方針や施策を打ち出すとき、紙ベースやメールだけで通知するのではなく、きちんと膝を突き合わせてその意図や背景を伝えることはもちろんですが、そのうえで“あなた”に“期待する役割”と“ゴール(期限と目標)”について話し合うことが重要です。
人はゴールが見えないまま走るのは不安な生き物です。不安は不満に変わり、やがて不信になります。
逆にゴールが見えれば、自分で考え、なんとか辿り着いてくれるものです。
TRUSTとCREDITの違いという記事でも書いたのですが、振り返ってみると部下とミーティングを重ねる中で“あなたに期待する役割”と“目標設定”を定期的に繰り返し確認するようになってから少しづつ雰囲気が良くなってきたように思います。
もし、あなたの会社や部署の社員のまとまりが悪かったり、気持ちがバラバラだったりと感じるようなら、理念を確認して、今一度ひとりひとりの果たすべく役割を全員で確認しあってみてはいかがでしょうか。
ちなみに私の考える管理部門の方針を参考までに紹介しておきます。
- ミッション(存在意義):経営者または従業員が直面している諸問題の解決策(知識・経験・アイデア)を示し、業務遂行上の障害や不安を取り除くこと
- ビジョン(あるべき姿):社内一の相談相手(真っ先に顔が浮かぶ)/広い守備範囲(知識・経験・アイデア)を持つ人材の集団となること
- バリュー(備えるべきスキル):臨機応変な対応力(イレギュラー対応力)、コミュニケーション力(傾聴力)、業務の正確性・スピード、ITスキル、スケジュール管理力