人事考課制度を見直したいと考えているならプロセスを重視しよう

人は承認欲求のかたまり

人事部長と人事考課について話をしているとよく「人は本当に承認欲求が強い」と言った話題になります。

SNSの「いいね」の数が気になるように、誰かが見てくれている、自分は評価されている、周囲から認められたいという思いは誰もが持っています。

人は、評価され、認められると、自信を持つことができますし、さらに成長することができます。

この承認欲求を上手く人事考課の仕組みに取り組めば、社員の成長を促すことができるでしょう。

そして、現職でも数年前から、従業員ひとりひとりに対して「目標管理制度」が導入されましたが、実際に運用していくのは考えているほど簡単ではありませんでした。

結果主義から成果主義へ

早くから目標管理制度を導入した企業は、個人目標を課したうえで組織目標を達成していくことを重視し、結果主義的な側面が強かったように思います。

私が新卒で銀行に入社した当初などは、支店の目数値が各担当に割り振られて、数字の達成状況を常に会議で詰められるといったことが行われていました。

顧客との難しい交渉や難しい案件を成立させたとしても、そのプロセスが評価されることは少なく、数字が達成されなければ意味がないといった雰囲気がありました。

行き過ぎた結果主義による目標管理は時代とともに是正され、最近ではプロセスを含めた結果を評価する成果主義へと徐々にシフトし、同時に年功序列による昇給・昇格も減少してきています。

「目標管理制度」は、本来の目的である組織目標を達成していくための、個人の能力開発や育成の手段としての側面が重視されるようになってきていると思います。

目標管理制度の導入で失敗しないために

このようにプロセス重視、人材育成としての手段の側面を重視しつつ導入したはずの目標管理制度でしたが、私の会社の初年度においては従業員に大きな不満を残す結果となってしまいました。

その原因は、目標設定の仕方にありました。

目標設定は目標管理制度を運用するうえで最も重要なプロセスですから、いい加減な目標、例えば低すぎる目標、組織目標とズレている目標、スタッフ間に格差がある目標など、を設定してしまうと評価の際に困ります。

何より目標管理の目標は上司が与えるものではなく、部下が自ら設定し納得したものでなければ意味がありませんので、面談でのすり合わせに時間をかけ、適正な目標となるように調整しなければなりません。

ところが、制度開始の初年度においてこのプロセスをきちんと理解して実施出来ていた間管理職は少なかった為、最終評価においてお手盛りの調整をせざるを得なくなったのです。

その為、目標を達成したのに評価が低い、最初から達成できない目標設定だった、上から降りてきた数字目標で納得していなかった等、評価段階になって多くの声が上がってきました。

その結果を、当社では従来通りに従業員の「処遇」つまり昇給・賞与・昇格・人事異動の決定に利用してしまったために一部の社員からは不満の声が上がったのです。

適正な目標設定のための面談を重視

私たちのような管理部門では特にですが、営業部門のような分かりやすい数字目標がないので目標設定自体が難しくなりがちです。

しかし、目標管理制度の成否を分けるのはこの時点ですから手は抜かないようにしましょう。

正直なところ、部下が8人もいると時間も取られますし、めちゃくちゃ疲れます。

私が面談時に気を付けているのは次の2点です。

  1. 目標の優先順位を確認すること
  2. 設定した目標以外はやらないということがないように、ルーティンワークをしっかりやることを確認すること

面談の中で、部下それぞれに対して育成につながり、かつ部下の課題を認識させる目標を設定することは、これからの管理職にとても重要なスキルだと思います。

その後、目標設定ができたら、あとは定期的な面談で進捗確認とフォローをしましょう。

部下との間に目標管理というツールがあれば、部下とのコミュニケーションがあまり得意ではない上司の方でも話がしやすいし、部下のほうも自身の課題を認識し相談もしやすくなるなどメリットが多いでしょう。

この繰り返しは、所謂「P」⇒「D」⇒「C」⇒「A」のサイクルを回すことになりますので、上司は上手く活用して目標達成と部下育成の両輪を回すように努めましょう。

目標管理制度は、このように上司と部下の能力開発において活用していくことで有益な制度だと思います。

もちろん人事考課にも利用することになるでしょうが、そのためだけに実施することがないように管理職は心得ておきましょう。

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人事,育成

Posted by M部長